青色蒼色‐ぶるうぶるう

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□ 東方推理風 □

紅い夕日が沈むあと 八

     八

 夜。街全体が暗く覆われ、街灯の僅かな光が地面へと落下する時間。今日は、いつにもなく冷え込み吐く息も全てが輝いて見える。空に見えるのは、厚く連なる雲。ただ、ちょくちょく望月が顔を出しているあたり運はいいのかな、と霊夢は思う。
 しかし、それにしたって……

「遅い……」

 霊夢の口から、思わず言葉が漏れる。今回、都市伝説の調査を手伝うことになってしまった霊夢だが、その原因――霧雨魔理沙がまだこの待ち合わせ場所に到着していないのだ。
 そもそも。今回の伝説も、前回からの都市伝説も、全て霧雨が提案しているものだ。そして恐ろしいことに。霧雨はその全てを遅刻していると言っても過言ではなかった。
 なんとなく、霊夢は目線をケータイの画面へと移す。もちろん、霧雨から連絡があるわけではなく、霊夢自身も時間を確認したかっただけだった。
 零時二分。
 待ち合わせは二十三時三十分。つまり三十二分の遅刻である。

「まったく……。あいつは時間厳守って言葉を知らないのかしら」

 このままいくと、どんどんストレスがたまっていきそうな気もしていた。
 そろそろ、自分だけで伝説を調査しようか、と思っていたその時、

「おっと、いたいた。――待ったか?」

 背後から、まったく悪びれていない声が届く。

「待ったわよ。三十分と二分の遅刻!」
「そいつは悪かった。ちょっとばかり、場所を調べててな。後十分は早く着ける予定だったんだが」

 霧雨は言いながらに目の前に印刷された紙をちらつかせる。

「結局遅刻じゃないのよ、それ」
「ん、そう言えばそうだな」

 ケラケラ笑っている霧雨を見ると、どことなく調子が狂う。霊夢は、早いうちに自分のペースに持っていかなければ、と思った。

「そう言えば、じゃないわよ。大体ねぇ、時間を設定したの、誰だか覚えてる?」

 と言うも。霧雨は明後日の方向を向き始めたので、霊夢はそれはもう丁寧に説明をしてあげることにした。

「あんたよ、あんた! 霧雨!」
「怒鳴ることは無いじゃないか。それにちと、……近所迷惑だぜ」

 あまりの剣幕に驚いたのか、それとも純粋に話を逸らしたかっただけなのか。霊夢に霧雨の心は読めなかった。
 確かに、霧雨の言うことも一理ある。さっきのは少し声を出し過ぎていたと霊夢自身気づいてはいたが。

「それじゃ、その遅れを取り戻すために、サクサク調査と行くぜ」
「まったく、誰のせいだと思ってるのよ……」

 最近、霧雨に振り回され気味な気もしていた霊夢は、霧雨に文句をぶつける。
 ――が、霧雨はまるで気にしていない様で、「霊夢、置いていくぞー?」などと言い、どんどん先に進んでいく。

「あんたねぇ、ちょっとは他人に合わせるってことをしなさいよ」
「善処しておくぜ」

 そんなことを言い、先に、先に進む霧雨を追いかけながら、霊夢は思った。
 ――今夜も、長くなりそうだ。



     ◇

「ここ――ね」
「ああ、ここ、だぜ?」

 ようやく、霊夢と霧雨は『紅い夕日が沈むあとのお屋敷』とやらに到着した。
 外周は深い森に囲まれており、お屋敷の雰囲気もどことなく暗かったため、夜中の今はとても遠くから肉眼では見える状態ではなかった。
 ――もっとも、昼間でも確認できるかは謎であったが。
 少なくとも、『お屋敷が消える』と言ったオカルトじみた現象は、この土地に住まうようになって間もない霊夢にはさっぱりわからなかった。
 屋敷は、近づいて初めて、年季を感じさせた。触れれば今にでも崩れ落ちそうな、黒ずみ、凹凸の目立つレンガ。
 そして玄関にあたる部分には、いくつもの蜘蛛の巣が張り巡らされていた。当然、こんな明かりのない場所に虫が寄ってくることなど先ず無いのだろうに。霊夢にはなぜこんなところに作ったのかはわからなかった。
 ああ、説明し忘れたが、このお屋敷には、屋敷本体のまわりに、同じくレンガでできた囲いが在った。門から、玄関までの距離はかなりあり、その間に所々レンガに囲まれた長方形の土地が存在して居たことから、おそらくガーデニングなどもしていたのだろう。
 そう言えば、不思議な部分があった。門の場所に、鉄柵のものではない、直線の溝が掘られていた。

「しっかし、えらく順調にここまで来れたものね?」

 途中の道はかなり入り組んでいて、とても霊夢一人では到達できそうになかった。
 しかし、霧雨はなんのためらいもなく茂みに突っ込み、それでここへ到着した。

「当然だ。私は、こういったことには妥協はしないんだぜ」
「なるほど、ね」

 霊夢は、今までの行動から、今の言動に対して納得する。

「さて……と。中、行ってみましょう?」

 いい加減、ボロボロの庭を見ているのは飽きた霊夢が、お屋敷の中へと入ることを提案する。
 霧雨としても中を見たかったのか、即座に了解の返事が帰ってくる。
 ギィ……、という錆びた鉄を無理やり動かした重低音が、あたりに鈍く響く。普段の足音がアルト・テノールなら、こっちの音はバスと言ったところか。
 外の悲惨さを見ていて、お屋敷の中を想像していたせいか、霊夢は少しばかり拍子抜けした。
 どことなく、全体的に綺麗だった。――もちろん、ところどころに蜘蛛の巣が張られ、シミや汚れが付いていて、ここだけ見れば汚い、という評価をつけるところなのだが、外と比べたら幾分かは綺麗だったと言えるだろう。
 ただ、全体的に暗い。もちろん、今が夜中だ、ということも有るのだろうが、それでもこれは暗すぎた。
 明かりは手元に持った懐中電灯のみ。このお屋敷には一応照明はあるみたいだった。とは言っても、それは霊夢がふと上を見たときに映ったロウソクの事だが。
 後ろを振り返ると、霧雨が指で壁の溝をなぞっている。霊夢は、何をしているのかと不思議に思い、聞く。

「霧雨、なにやってるの?」
「ん、ホコリのチェック……とでも言うべきか?」

 霧雨はそう言うと、ぐいっとホコリにまみれた左手人差し指を霊夢の顔に近づける。
 なるほど確かに、かなりの量のホコリが有るようだ。

「年期物、って訳ね」
「ああ。こりゃ、伝説はさておき、相当昔から在ったのは事実って訳だ」

 聞きながらに、霊夢も壁を指でこする。すると、おおよそ三ミリほどのホコリが指にまとわりつく。
 ホコリは、物体の隙間から入り込み、そこに堆積する。通常、人間や動物が出入すればそれらに動かされる為、その量は必然的に少なくなる。つまり、この場所には何年もの間、人の出入りが無い。

「確かに、ね。でも……」

 ここで疑問が浮かび上がった。

「でも?」

 霧雨が聞き返してくる。
 その疑問は――、

「五百年間、ホコリが溜まったとしたら、これくらいの量じゃ、すまないわよね?」

 一瞬、時が止まったかのように、全ての音が停止した。もちろん、そんなことは錯覚に過ぎないのだが、霊夢はそう感じた。

「五百年……。それは伝説の話、だぜ?」

 そうか、と理解する。何を理解したのか、と聞かれれば、霧雨の言葉……ではない。
 なぜ時が止まったかのように感じたのか。霧雨は普段の質問には、ほぼ全てに即答する。だが、今回のこの質問には、少しばかりの間が在った。
 だから、時が止まったと感じた。

「伝説……ねえ。ま、ここで穴探しなんて、しても意味はないわね」
「ああ、そういうことだぜ。この機会を逃したら最低でも一ヶ月またなきゃ行けないからな」

 そう言い終わると共に、霧雨は奥へと進む。霧雨とはほんの二、三メートルしか離れていないのだが、それでようやく、このお屋敷は普通以上に不気味だということに気づいた。
 体を悪寒が走る。急いで、霧雨についていくことにした。


 
「そう言えば……霊夢はなんで一昨日の夜に出歩いていたんだ?」

 お屋敷を中程まで進んだところで、霧雨が口を開いた。そして、何かと思えば一昨日の話。

「なんで……って、ホームルームで言ってなかったかしら」
「ああ、聞きそびれた。あの時は私が都市伝説の話に切り替えたからな」

 ああ、そう言えば、と霊夢は納得した。確かに、あの時は霧雨のカツオ節の話の後は都市伝説の話しかしていなかった気がする。

「都市伝説を知らなかったから、それを探している、って言うのは違うだろ? 土地勘が無いから、と言って散策をするのは、お昼だって出来る事。何もお天道様が沈んだあとにすることでも無い。そしてまだ慣れていない土地でしかも夜遊をするような奴には見えないし……」

 確かに、霧雨の述べた通り。そんな理由で出歩いていたわけでは無い。
 いっそ、この場で真実を述べてもいいのだが。しかし、霊夢は迷っていた。
 果たして。――魔女を探している、などと言ってしまっていいのだろうか?
 霧雨の事だから、どうせこれにも便乗してくるに決まっているが。
 気になるのは霧雨が霊夢を見る角度だ。今のままなら『オカルトに興味の有る同級生』ですむのだが、最初からそんなオカルトじみたことをしていた……となれば、角度が急激に代わり、『オカルトに精通した同級生』と言う視線で見られる可能性が在った。
 そんな風な、つまるところ言いたくないという意見。しかしやはり相反する思考は存在し続ける訳で。
 ――このことを告げたい。結局のところ、霊夢は紫から押し付けられた魔女探しを手伝ってもらいたかった。どう考えても、このほぼ見知らぬ地で特定種族を見つけるなんて無理に決まっているし、そもそも存在するかもわからない。
 その点霧雨なら、ここは見知らぬ地ではないし、少なからず霊夢よりかはオカルトにも精通している。
 霧雨なら、どうにか出来るかもしれないのだ。

「まあ、答えられない、って言うなら無理には聞かないけどな」

 勝手に結論付け、それを霊夢に告げると、そそくさと前進する霧雨。

「ちょっと待ちなさいよ。だれも、言わないなんて言ってないわ」
「そうか。ならもう一度聞こう。一昨日の夜、なぜ出歩いていたんだ?」

 そう。思えば、これが全ての始まりだったのかもしれない。
 物語の始まりには、少しばかり遅かったが。
 以前の――転校したての霊夢なら、絶対に言わなかったことを。
 ゆっくりと、口を開き、言葉を――

「――魔女を、探してたのよ」

 どこかで――運命の、歯車が動く音がした。
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Date:2010/07/22
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を~ とりあえず単刀直入に言おう。今までで一番つづきが読みたい
2010/07/22 【AKIBA】 URL #- 

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